モルモットの歴史
モルモットの歴史
雲を突き抜けて落ちて来た天使ともいえる可愛さの塊「モルモット」ですが本当に空から落ちてきたわけではありません。
このページではそんなモルモットがどこで生まれいつ頃からペットとして飼育されたのかとついでにモルモットの名前の由来にも触れておきます。
地元で沢山食われる(~1500年代まで)
モルモットの祖先たちは大昔に南アメリカ大陸のアンデス(コロンビア・ペルー・エクアドル・ボリビア)で生まれています。
私たちの身近にいるモルモットと呼ばれている生き物はペルーテンジクネズミを家畜化した種だとされているので野生のモルモットは存在していません。
そんなモルモット達は最初ペットとしてではなく食用として大昔から人間に飼育されていました。
※現地ではまだまだ食料としても現役バリバリです!
あまり知られていませんが食料以外でも古代のモチェ文明ではモルモットを崇拝していたのでは?とも言われています。
紀元前500年頃の遺跡の考古学的調査をしていてモルモットを描いた彫像がペルーとエクアドルで発掘されたのが崇拝していたのではないかと言われる理由です。
ですがこの頃のモルモットとして扱われている生き物は残念ながら我々の良く知るモルモットではなく恐らく原種のペルーテンジクネズミです。
ならば現在モルモットと呼ばれている種はいつ頃に生まれたのかというと
1200年頃~スペインがインカ帝国を征服する1532年までの間に先住民がペルーテンジクネズミを品種改良した生き物こそ今現在モルモットと呼ばれる種の元になります。
食料にされたり崇拝されたり品種改良されたり呪術に使われたりと色々な扱いを受けているモルモットですがそれだけ地元の人々にとって身近な存在だったという事です。
ヨーロッパでペットとして覚醒!(1500年代~現在)
モルモットの生まれ故郷では食べられたり祀られたりとされてきましたが16世紀ごろにペットとしての第一歩を踏み出します。
(アンデス地方でも大昔からペットとして飼育されている子は居たと思いますが極少数の子だけだと思いますのでペットとしての歴史にはカウントしない事にしました!)
1530年代にインカ帝国をスペインが征服したことでスペイン・オランダ・イギリスの商人たちがモルモット達の住んでいる所にもやってくるようになりました。
そうなると子の可愛さに心を打たれて船に乗せてしまう人間が現れても何ら不思議ではありません。
という事で持ち前の可愛さを武器に船を強奪して長い旅を経てヨーロッパへ着きモルモットはペットとして絶対的地位を手にし今では一つの国ともいえる集団を形成し人間を顎で使う様になり「毎日50トンの生チモシーを献上させる」「年に一度の里帰りのアンデス旅行ではアンデスの草という草を全て食い尽くす」「モルモット1匹に付き5人の獣医さんを要求する」「モルモットとハムスターを間違えたら死刑」などなど可愛さを武器にやりたい放題やってます。
というのは嘘で恐らく可愛さに心打たれて船に乗せたわけでは無く王族や上流階級が高く買うであろうと考えたスペイン人航海士の手で船に乗せられてヨーロッパにやってきました。
無事ヨーロッパに付くとその可愛さからすぐに様々な国の王族・上流階級で人気のペットになりました。
エリザベス1世もこの中の一人で最初期にモルモットをペットとして飼育した人物の一人として有名です。
エリザベス1世が飼育していたことでモルモットを飼育する事は上流階級の間で一種のステータスとなりモルモットは上流階級のペットとして人気を博しました。
※この頃のヨーロッパでも少なからず食用としての需要はあったようです。
現在でも欧州ではペットとして数多くの人に愛され沢山のモルモットがその家の家族として幸せに暮らしています。
日本上陸(1800年代~現在)
ヨーロッパでモルモットが飼育されるようになってから大分日が経って1800年代江戸時代の日本にオランダ商船に乗せられてモルモットはやってきました。
最初はオスメス1匹ずつが長崎の港にやってきました。
メスは残念ながら長崎で死んでしまいましたがオスは江戸幕府に買われ江戸へ行き三毛で珍重されたのでその後もモルモットが日本にやってくることになりました。
日本でも最初はヨーロッパと同じように階級が高い人たちの間でペットとして飼育されていたようです。
時が経ち明治時代頃になるとモルモットは実験動物としても使われるようになってきました。
ドイツの細菌学者ロベルト・コッホを皮切りに細菌学の発展と共にドイツ医学が盛んだった当時の日本もモルモットを実験動物とした研究がされるようになりました。
※モルモットは実験動物の代表みたいな扱われ方ですが現在は実験動物としてモルモットが使用される事はかなり少なくなってきました。
同時期の明治頃に一般にも広くペットとして普及し始め今に至ります。
現地での意外なモルモットの役割
モルモットの故郷南アメリカの一部の地域では民間の呪医である「クランデロ」と呼ばれる呪術者達がいます。
その呪術者の間で行われる儀式の中の一つにモルモットを使った物があります。
その儀式は呪術者の元に来た患者にモルモットをこすりつけてモルモットの鳴き声で体の悪い所を探し祈祷して治すという物です。
一通りの儀式が終わるとモルモットのお腹を裂き内臓を見る事で儀式が成功したかどうか判断する場合もあるそうです。
黒い毛のモルモットは珍しく儀式で使う際は特に神聖な物として扱われるそうです。
※この儀式をしても100%病気は治らないので決して真似しないで大人しく病院に行って下さい!
実験動物の代表⁉
よくドラマ・映画・小説など様々な場所で実験体になる人や物の事を「モルモット」と呼んでいるのを見聞きします。
何も知らなければ今もモルモットは実験動物として大量に使われていると誤解してしまいがちですが現在モルモットを実験動物として使用する事は昔と比べるとかなり少ないです。
では何故まだモルモットが実験動物の代表のように扱われるようになったかの経緯を紹介します。
実験動物としての活躍
モルモットが始めて実験動物として使われたのは調べた限り1780年のアントワーヌ・ラヴォワジエが行った熱量計の使った実験でモルモットが使用されています。
その後は数多くの実験に使用されビタミンCの発見・アドレナリンの発見・結核菌の発見・ジフテリアのワクチン・結核のワクチン・腎臓透析・心臓弁膜置換術・輸血・抗凝固剤・喘息薬・抗生剤の開発につながる研究などなど人類に多大なる貢献を果たしてくれています。
モルモットはノーベル医学賞を受賞した内の約23件に貢献してくれています。
その他にもソ連のコラブリ・スプートニクという宇宙船に乗って生命維持装置の機能・無重力環境の影響などを調べる実験にもモルモットが使用されていました。
実験に使用されたモルモットがいなければ存在しなかった・開発が遅れていた薬なども多くあるかと思います。
その薬のおかげで命を助けられた人もいると思うとモルモットには頭が上がりません。
※変わった実験として日本海軍の軍艦武蔵の砲撃時の爆風の影響を調べるために使われたこともあるそうです。
何故モルモットが実験動物として使われたのか
人間と生理学的に似ている部分が多いのが主な理由とされています。
人間とモルモットは全然似てない!と思うかも知れませんが同じ哺乳類であり案外近い生き物なんです。
また他の動物と比べて感染症に対する感受性や免疫システムが人間と似ているので感染症の研究ではとても優れた実験動物と言えます。
他にも人と同じでビタミンCを体内で合成できない・薬物に対する反応が高いなど実験動物として優れている点もあります。
今現在実験動物の数は年々減少傾向にありその中でもモルモットは一時期と比べると実験動物として使われている頭数が激減しています。
本当は実験動物という概念自体が過去の物となるのが望ましいですが中々難しいのが現実です...
何故実験体がモルモットと呼ばれるのか
長い間実験動物として使用されてきた歴史は勿論実験体がモルモットと呼ばれる理由の一つです。
他の説だと1933年アメリカで発売されたアーサー・カレットとフレデリック・J・シュリンク共同執筆の「1億のモルモット」という本があります。
この本は「消費者は生産者の実験に使われているモルモットのようだ」というような事が書かれています。
この本に当時の世論は非常に大きく反応し食品汚染と薬物の副作用に多くの人がショックを受け1938年の連邦食品医薬品化粧品法の可決に一役買いました。
そしてこの本のタイトル「1億のモルモット」の影響で実験動物=モルモットというイメージが付いたという説もあります。
※英語でも実験体の事をモルモットと呼んでいるそうです。
モルモットは何故モルモットなの?
モルモットの名前の由来は勘違い⁉
世界中でモルモットの事をモルモットと呼んでいるのは日本だけです。
江戸時代初めてモルモットが来た時にオランダ人が当時の呼び名「マーモット」と紹介してそれが訛って「モルモット」と呼ばれるようになってしまいました。
※現在のオランダ語のマーモットはリス科の別の動物の事です。
オランダではモルモットは通常「cavia」と呼ばれています。(発音は多分「キャエビァ」みたいな感じです。)
しかし明治時代にこのままではマーモットと混同してしまう!となって和名ではテンジクネズミと呼ばれるようになります。
テンジクネズミに決められた説として
当時のオランダ語での呼び名の一つ「東インドのネズミ」という意味の言葉を訳したという説
当時「天竺=遠く」の意味だったので遠くから来たネズミの意味だという説の二つがあります。
英語では「ギニアピック」と呼ばれます
英語ではモルモットは「ギニアピッグ」と呼ばれています。
何故ギニアピッグと呼ばれているかはいくつかの説があります。
まず何故「ギニア」が付いたかの説を紹介します。
当時最初にイギリスに来た船がギニア経由で来たからギニアの動物だと勘違いしてしまったという説。
「ギニア」と「ガイアナ」を聞き間違えた説。
16世紀の通貨の単位「ギニー」に由来する説。
「ギニア」という単語が遠く未知の国という事でそこから来た説。
鳴き声からつけられたとする説など色々あります。
続いて「ピッグ」が付いている理由です
焼いた肉の味が豚肉の味に似ていたからという説。
見た目が小さい豚のようだからという説。
どちらにせよ豚に似ているから英語ではピッグと付いています。
世界のモルモットの呼び方
発音は管理人がグーグル翻訳を耳で聞いて書いているので正確性は皆無ですこんな感じなのかな?程度です。
- アラビア語 خنزير الهند
「クィンゼェルギィビヤ」みたいな発音です。 - イタリア語 porcellino d'India
「ポルチェリーノ ディンディア」みたいな発音です。 - フランス語 Cochon d'Inde
「コションダンド」みたいな発音です。 - ポルトガル語 porquinho da Índia
「ポルキーニョ・ダ・インディア」みたいな発音です。 - ドイツ語 Meerschweinchen
「メーシュヴァインヒェン」みたいな発音です。 - 中国語 豚鼠
「クウェンシュゥ」みたいな発音です。 - スペイン語語 conejillo de indias
「コネヒルディインディアス」みたいな発音です。 - スウェーデン語 marsvin
「マァルスヴィン」みたいな発音です。
各国モルモットの呼び方は様々ですが基本「ギニア」「豚」を意味する場合が多いです。
もし海外の方とモルモットについて話す機会があれば役立てて下さい。
参考にさせて頂いたサイト
- https://slate.com/
- https://www.understandinganimalresearch.org.uk/
- https://www.four-paws.org/
- https://haypigs.com/
- https://www.thoughtco.com/
- https://english.stackexchange.com/
- https://www.animalresearch.info/en/
- https://en.wikipedia.org/wiki/Main_Page
- https://www.omlet.co.uk/
- https://www.nature.com/srep/